個展や美術展に行ったり、何かを作ったり、
あなたがいつもアートに触れるのは、昼?夜?
私はトロントであるアートフェスティバルに出会ってから、夜に “寝る間を惜しんで”アートに触れる時間を楽しむようにしている。
そうして少し夜更かししてでもアートに触れる時間はどこか特別で、新しい芸術を見つけるきっかけにもなるし、何より日常が豊かになる気がするから。
今回はそんな「夜アート」の魅力を教えてくれた、トロントのアートフェスNUIT BLANCHE(ニュイ・ブランシュフランス語で”眠らない夜/白夜”)についてお届けします。
そして NUIT BLANCHE的、「夜アート」をたしなむポイントについても考えてみました。
トロント最大のアートフェス NUIT BLANCHE(ニュイ・ブランシュ)
カナダというと「英語を学ぶ場所」というイメージけれど、実はアート・カルチャーに対する“好奇心“がとても旺盛。
トロント国際映画祭はもちろん、アート・歴史系は多種多様なエキシビションが見きれないくらいあるし、フードフェスなども盛ん。
中でもカナダを代表する世界最大の現代アートフェスティバルが Nuit Blanche Toronto(ニュイ・ブランシュ:フランス語で“眠らない夜“/”白夜“)です。
1年に1回、日没から夜明けまで、一夜だけ開催されるオールナイト・アートフェスティバル。
その日は街全体が美術館と化し、ダウンタウンのビル、駅、ストリート、あらゆる場所がギャラリーになる。
2006年から始まったこのフェスティバル、2018年には120万人が参加したビッグイベントで、これまで4900人ものアーティストたちが参加し、1400以上のオフィシャルアートが展示されてきたという。
”多様性”をアートで表現する
NUIT BLANCHEが人々を魅了する理由、それはマルチカルチャー都市トロントならではの”多様性”にある。
トロントはさまざまな人種・文化が共存する場所。
それぞれが「多様な価値観」が認め合いながら生きていて、それがゆえに生まれる自由な発想が NUIT BLANCHEには凝縮されているのだ。
そんな”多様性”が作り出す NUIT BLANCHEの魅力がこちら。
大人も子供も夜アートに酔いしれる
まず NUIT BLANCHEの魅力のひとつは「人の多様性」。
夜の7時から朝の7時まで夜通し続くアートフェスだけれど、その日は子供だって夜更かししてダウンタウンに繰り出し、家族とアートを楽しむ。
幼いころからアートやカルチャーに触れる面白さを知ることができるのはとても素敵だと思う。
そして普段はアートにあまり関心がない人だってこの日は別。
エンターテイメント性にあふれ、現代アートをよく知らなくても楽しめる展示が数多くあるので、誰もが気軽に街を歩きながら現代アートの感性に触れられる。
何を使ってどう表現するかは自由
そして「表現・感性の多様性」も NUIT BLANCHEの魅力。NUIT BLANCHEで展示されるアートは、時に音楽、時に光、時には布切れ、時にはオブジェ、パトカーだってアートになるし、とにかくユニークで自由。
表現するものもテーマに沿っていれば自由。
歴史を表現したり、
”#MeToo”をアートとコラボレーションさせたり、
誰もが日々言えずに心にしまっている思いを引き出すしかけの「観客参加型」アートだったり、
とにかく奥行きや幅の深い表現を楽しめる。
使われている素材から、制作方法から、「作り手は何を表現したいのだろう?」とアーティストの感性に触れ、考えを巡らせるのも面白い。
毎年変わるテーマも魅力
NUIT BLANCHEのテーマは毎年変わり、アーティストたちはそれぞれテーマに沿って、様々な視点からアートを作り出す。
2017年のテーマは「Many Possible Futures(多くの可能性ある未来)」、2018年は「You Are Here(あなたはここにいる)」、そして2019年のテーマは「Continuum(連続性)」と毎年ユニーク。
ひとつのテーマで様々なアーティスト、企業が工夫を凝らして壮大なアートを作り出す、どんな作品が生まれるのか当夜まで分からないワクワクも NUIT BLANCHEの楽しさのひとつ。
NUIT BLANCHE的「夜アート」のススメ
NUIT BLANCHE(ニュイ・ブランシュ)は年に1度のフェスティバルだけど、NUIT BLANCHEと同じように夜にアートに親しむことはいつでもできる。
私は「アートのための特別な夜」を設けるようになってから、アートへの興味の幅も広がったし、芸術本もよく読むようになった。
すると街を歩いていても、前は気づかなかった何気ないアートが目に留まったり、色彩感覚が研ぎ澄まされたり、日常が少し刺激的で充実している気がする。
そんな私がNUIT BLANCHE(ニュイ・ブランシュ)からヒントを得た、「夜アート」楽しみ方のポイントがこちら。
アートのための特別な日を作る
NUIT BLANCHEに心躍る理由は、”その日だけ”という特別感。だから事前にアーティストについて予習したりもするし、その日は思いっきりアートを楽しむぞ、と意気込む。
その特別感は感性を研ぎ澄ませる気がするし、集中力も増す。だからあえて「月最後の金曜日はアートの日にしよう」などと自分で特別なアートの日を作ってみよう。
自分だけのテーマを決める
NUIT BLANCHEを見ると、テーマがあるから広がる芸術もあると思う。
カラフル、クラシック、POP、音楽、フェミニズム、抽象的、サイケデリック……なんでもいい、自分の心が躍るテーマを決めて、そのテーマに合ったアートを思いっきり味わおう。見てみたい映画や、気になっている美術館の展示からヒントを得るのもあり。
あえて夜更かしする
特別な「夜アート」の日を決めたら、その日は芸術で満たされることが最優先。
あえて夜更かしのために夜食を用意してみたり、ワインを仕入れたり、”夜+アート”を最大限に面白くしてみよう。
どんな形のアートもアリ
何かを”表現する”ということはすべてが芸術。「アート=絵」と決めてしまわずに、映像だって音だって、ファッションだって食べものだって、すべてがアートなのだということを心にとめて観賞しよう。
場所は外でも家でもOK
「夜アート」で何を楽しむかはあなた次第。
夜にやっているギャラリーや美術展に行くもよし、芸術本を遅くまで読みあさるもよし。または映画のレイトショーに出かけてもいいし、おこもりで制作活動をするのもあり。とにかく自分がアーティスティックに感じることをしよう。
日常を少し豊かにする「夜アート」、あなたもぜひ特別な一夜だけのアートを楽しんでみて。
そしてNUIT BLANCHE(ニュイ・ブランシュ)を実際に見てみたい!というあなたは今秋トロントに行ってしまうのもアリ。
今日も何気ない1日をアートでスパイスアップしてみよう。