どんなに観たい絵があろうと、どんなに気になる画家がいようと、海外の美術館を気軽に訪れることが難しい今。
多くの有名な美術館がオンライン公開を始めたし、Google Art & Cultureなんかでも世界のアートを鑑賞できて、それはそれで楽しい。
でもやっぱりデジタルで見れば見るほど、実際にオブジェクトとして絵を鑑賞したい気持ちが増すんです。
(多分私たちは普段、美術館独特のあの匂いや空気感も含めて芸術を楽しんでいるから。)
とにかくデジタルはデジタルでいいけれど、そこにある雰囲気も含めて絵を味わいたい。そんな私の欲求を満たしてくれたのが、少し前に出会ったヴィンテージアートブックです。
アートブック 『Le monde des grands musées』
こちらは、近所の古本屋で発見したアートブック。約50年前に出版されたものです。
『Le monde des grands musées(世界の素晴らしい美術館)』というシリーズの30号で、シカゴにあるArt Institute of Chicagoの絵画を掲載しています。
なんとワンコインで手にしたこちらのアートブックですが、実際にページをめくっているとまるで本当に美術館で絵を観ているかのような気分になるから不思議。
というのも、古本ならではの”ザ・ヴィンテージ”な紙の匂いが、どこかあの美術館に入った時の独特の匂いと雰囲気を思い出させるのです。
そして本の古びた感じも、何十年も前に描かれた絵画の質感と経年変化をほんの少し再現しています。
これまで知らなかった絵やアーティストにも触れ、色や線を眺めては、その表現方法の違いやバリエーションをじっくり鑑賞。
1800年代の著名な画家から、ジャクソン・ポロックなどの20世紀に活躍した画家まで多様なアメリカ美術の変遷を辿ることができました。
そしてもちろん、Art Institute of Chicagoがいつか訪れたい美術館リストに加わりました。
今はこの本から雰囲気を存分に味わいながら、いつかそこを訪れた時の自分を想像し浸っています。
あえて本を「持つ」楽しさ
おうちで美術館を擬似体験するという、今だからこそのアート鑑賞法を予想外に見出してくれたこのアートブック。
好きなアーティストの絵画も載っているし、何よりヴィンテージな雰囲気が部屋にアクセントを足してくれているし、これから長く大切に持っていたいと思います。
アナログで本を「所有」する味わい
最近、電子書籍を読むことも増えたし、購入した本も読み終えたらフリマアプリやリサイクルショップで売るのが当たり前に。
本を「持つ」ことの楽しさを忘れかけていました。
このアートブックは、何十年も前に誰かが手にして大切に保管していたからこそ、50年経った今、別の人の手に渡りその当時とはまた違った楽しみ方を見出している。
そして図らずも、それが自由に美術館を訪れられない今の状況に合っている偶然。
そう考えると、多くがデジタルで完結する今の時代でも、時にはあえて物を持ち、手触りや匂いも含めその物を味わっていきたい。
と、そんなことをたわいもなく考えながら、家なので飲食自由でのんびりとページをめくり鑑賞しています。